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【めまいとビタミンDの関係】——不足が原因になる?最新エビデンスと治療方法を脳神経外科医が解説

 

◆ なぜ「めまい」とビタミンDが注目されているのか?

最近、耳鼻咽喉科や脳神経外科の領域で ビタミンD不足とめまい、特に良性発作性頭位めまい症(BPPV)の再発 が強く関連することが報告されています。

BPPV は高齢の方に多いめまいの一種で、耳石が三半規管に迷い込むことで起こります。
近年の研究で、ビタミンD不足によって耳石の代謝が乱れ、再発リスクが上がる可能性が指摘されています。


◆ ビタミンDが関わる「耳石代謝」とは?

ビタミンDは、カルシウムとリンの代謝を調整する役割があります。
耳の奥にある「耳石(カルシウム結晶)」の形成にはカルシウム代謝が不可欠で、ビタミンD不足が続くと耳石が不安定になり、剥がれ落ちやすくなると考えられています。

そのため、

  • ビタミンD不足 → 耳石が不安定 → BPPV 再発リスク増加
    というメカニズムでめまいが起こりやすくなると推測されています。


◆ 研究で明らかになった「ビタミンDとめまい」の関係

1. ビタミンD欠乏は BPPV の再発率を上げる

韓国の RCT(JAMA Neurology, 2020)では、
ビタミンDとカルシウムを補充した群で BPPV の再発が有意に減少しました。

  • 再発率:補充群 14% vs 非補充群 28%

  • 特に 血中 25(OH)D < 20 ng/mL の患者で効果が大きい

2. ビタミンDレベルとめまい頻度は相関する

複数のメタ解析でも、

  • ビタミンD低値の人ほど BPPV の発症・再発が多い

  • 補充療法が再発予防に有効
    と報告されています(Frontiers in Neurology, 2021)。


◆ どんな人がビタミンD不足になりやすい?

以下の方は不足している可能性があります。

  • 屋内で過ごす時間が長い(デスクワーク、高齢者)

  • 日焼けを避けている

  • 骨粗鬆症がある

  • 肥満傾向

  • 腎機能が低下している

  • 食事の偏り(魚・卵が少ない)

特に日本人は日照時間が少ない季節にビタミンD不足が悪化しがちです。


◆ 病院での検査:ビタミンDは血液検査でわかる

めまいの再発が続く場合、
血中 25(OH)D(ビタミンD貯蔵型)を測定することで不足かどうかが判定できます。

判定の目安

血中25(OH)D 判定
<20 ng/mL 不足(欠乏)
20–30 ng/mL 不十分
30–50 ng/mL 望ましい

◆ ビタミンD不足によるめまいの治療方法

① ビタミンD補充(食事)

  • 鮭、サバ、イワシ

  • 卵黄

  • きのこ類(干し椎茸)

食品だけで必要量に届かないことが多いため、サプリ併用が現実的です。


② 日光浴(屋外活動)

  • 1日10〜20分、手足に日光を浴びる

  • 冬季はより長めが必要
    ※ 皮膚癌リスクを避けるため、長時間の日焼けは不要


③ ビタミンDサプリメント

BPPV 再発予防の基準は研究により多少異なりますが、
800–1,000 IU/日 程度 が一般的。

必要に応じて脳神経外科・耳鼻科で処方可能です。


④ 根本治療:頭位治療(Epley法)と併用

ビタミンD補充はあくまで 再発予防のための追加治療 です。
急性期のめまいは 頭位治療(エプレイ法) が最優先です。


◆ ビタミンD不足が疑われる場合は早めの受診を

めまいの多くは良性ですが、中には 脳梗塞や脳腫瘍による危険なめまい もあります。
以下がある場合は脳神経外科での MRI 検査を推奨します。

  • ろれつが回らない

  • 手足のしびれ・脱力

  • 立てないほどの激しいめまい

  • 頭痛を伴うめまい

  • 繰り返す・長引くめまい

ビタミンD検査 + めまいの専門的評価 によって再発予防と安全性が高まります。


◆ まとめ:ビタミンDは「めまい再発予防」に重要な栄養素

  • ビタミンD不足は 耳石代謝の異常 → BPPV再発リスク を高める

  • ビタミンD補充とカルシウムが再発予防に有効

  • サプリ、食事、日光浴を組み合わせるのが最適

  • 初回のめまいは MRI で脳の異常をチェックすることが大切

当院(橿原脳神経外科クリニック)では、
めまいの原因診断・MRI検査・ビタミンD評価・再発予防指導まで一貫して行っています。


◆ 参考文献(年代・ページ明記)

  1. Jeong SH, et al. Vitamin D supplementation to prevent recurrence of benign paroxysmal positional vertigo. JAMA Neurology. 2020;77(9):1059–1065.

  2. Yang CJ, et al. Association between serum vitamin D levels and benign paroxysmal positional vertigo: A systematic review and meta-analysis. Frontiers in Neurology. 2021;12:611095.

  3. Buki B, et al. Vitamin D deficiency and vestibular disorders. European Archives of Oto-Rhino-Laryngology. 2021;278:295–301.

  4. Holick MF. Vitamin D deficiency. New England Journal of Medicine. 2007;357:266–281.

  5. Von Brevern M, et al. Benign paroxysmal positional vertigo: Diagnostic criteria and treatment. Continuum (Neurology). 2015;21(5):1223–1238.