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「片頭痛を予防する栄養素まとめ~どうしても薬に頼りたくないあなたへ~|マグネシウム・ビタミンD・B2など最新エビデンスで解説」

片頭痛の予防に大切な栄養素

脳神経外科専門医が「食事」と「サプリ」を解説

片頭痛は、ストレスや睡眠不足、ホルモンバランス、天候の変化など、さまざまな要因が重なって起こる脳の過敏状態と考えられています。
その中で、「栄養」は見落とされがちですが、脳のエネルギー代謝や炎症、血管の反応性に関わる重要な要素です。

近年、マグネシウム・ビタミンB2・CoQ10・ビタミンD・オメガ3脂肪酸などを用いたランダム化比較試験やメタ解析が報告され、片頭痛予防への有効性が示されています。OUP Academic+4PubMed+4Frontiers+4

ここでは、患者さんにもわかりやすく、かつ医療者の方にも参考になるように、主な栄養素とエビデンスを整理します。


1. 片頭痛と食事・栄養の基本的な考え方

1-1. 「トリガー」と「不足」に分けて考える

片頭痛と食事の関係は、大きく2つに分けて考えます。

  • ① 発作を誘発しやすい食品(トリガー)
    チョコレート、赤ワイン、チーズ、加工肉、柑橘類、カフェイン、MSG(うま味調味料)、アスパルテームなどが、片頭痛の誘因として報告されています。Association of Migraine Disorders+3PMC+3National Migraine Centre+3
    ただし**全員に当てはまるわけではなく「個人差が大きい」**ことが重要です。

  • ② 脳の状態を整える栄養素の不足
    マグネシウムやビタミンB群、ビタミンD、オメガ3脂肪酸などが不足していると、脳の興奮性や炎症が高まり、片頭痛が起こりやすくなる可能性が指摘されています。drks.de+2Frontiers+2


2. 片頭痛予防で注目されている主な栄養素

2-1. マグネシウム

ポイント

  • 神経の興奮を抑え、血管の収縮・拡張を調整するミネラル成分です。

  • 片頭痛患者では、マグネシウム不足がしばしば報告されていますdrks.de

エビデンス

600 mg/日(マグネシウムシトラート)を12週投与したランダム化比較試験。
発作頻度が41.6%減少(プラセボは15.8%)と十分な片頭痛予防効果を認めています。Peikert et al.Cephalalgia 1996, 16:257–263)

  • マグネシウム・ビタミンB2・CoQ10を組み合わせたサプリメントを用いた多施設ランダム化比較試験(Migravent®研究)では、3か月の内服により片頭痛痛みの強さと生活の質(HIT-6スコア)が有意に改善しました。PubMed

  • 他の研究でも、マグネシウム単独あるいは他の栄養素との併用で、片頭痛発作の頻度や重症度が改善したと報告されています。クリニカルトライアルズ+1

多く含まれる食品

  • 海藻(わかめ・ひじき)

  • 大豆製品(豆腐、納豆)

  • ナッツ類(アーモンド、くるみ)

  • 玄米、全粒穀物

院長のコメント
便秘の治療薬として広く使用されているお薬なので飲みすぎなければ試す価値は十分にあるでしょう。推奨用量は600mg/日程度です。


2-2. ビタミンB2(リボフラビン)とビタミンB群

ポイント

  • ミトコンドリアのエネルギー産生に必須

  • 「脳のエネルギー不足」が片頭痛の一因と考えられており、それを補う目的で補充療法を行う場合があります。Frontiers

エビデンス

  • 400 mg/日を3か月投与した試験で、片頭痛発作頻度が約56%改善(プラセボは19%)

  • 高用量での内服ではありますが、十分な片頭痛予防効果と思います。Schoenen et al.Neurology.1988,50:466-470)
  • 他の研究では、100 mg/日のリボフラビンがプロプラノロールと同程度の予防効果を示したとの報告もあります。Frontiers

  • ビタミンB6・B9(葉酸)・B12の組み合わせが、ホモシステインの低下を通じて片頭痛の重症度・障害度を改善したとする研究も多数あります。Frontiers

多く含まれる食品

  • ビタミンB2:レバー、牛乳・乳製品、卵、ほうれん草

  • ビタミンB6:まぐろ、かつお、鶏むね肉、バナナ

  • 葉酸:緑黄色野菜、枝豆、いちご

  • ビタミンB12:魚介類、肉類

院長のコメント
水溶性ビタミンで比較的安全性は高いです。様々な予防薬を試しても効果がなかった場合は試す価値は十分にあるでしょう。


2-3. CoQ10(コエンザイムQ10)

ポイント

  • ミトコンドリア内でのエネルギー産生(ATP産生)に関わる脂溶性補酵素

  • 抗酸化作用もあり、神経炎症の抑制が期待されています。MDPI+1

エビデンス

  • CoQ10 100〜400 mg/日を3か月程度投与したランダム化比較試験で、片頭痛の日数・重症度・持続時間が有意に減少したとする報告が複数あります。Frontiers+1

  • リボフラビン・マグネシウムとの併用サプリでも症状改善が見られ、複数の栄養素を組み合わせることで相乗効果がある可能性が示されています。PubMed+1

多く含まれる食品

  • 青魚(さば、いわし)

  • 肉類、とくに心臓などの臓器肉

  • 大豆製品

臨床的コメント
比較的安全性の高いサプリですが、抗凝固薬など一部の薬との相互作用が指摘されており、内服中の薬がある方は必ず主治医に相談してから使用しましょう。


2-4. ビタミンD

ポイント

  • 骨だけでなく、免疫・炎症・神経保護など幅広い作用を持つホルモン様ビタミン

  • 近年、ビタミンD欠乏と頭痛・片頭痛の関連を示す研究が増えています。Nature+2Dove Medical Press+2

エビデンス

  • 観察研究とメタ解析では、片頭痛患者では25(OH)ビタミンD値が有意に低いこと、ビタミンD欠乏者ほど頭痛日数が多いことが報告されています。Nature+2ResearchGate+2

  • 6つのランダム化比較試験を対象としたメタ解析では、ビタミンD補充により月あたりの頭痛発作数・頭痛日数・障害度スコアが有意に減少しました(持続時間や痛みの強さへの影響は限定的)。Frontiers+2ScienceDirect+2

  • さらに、メンデルランダム化解析により、血中ビタミンD濃度の上昇が片頭痛リスクの低下と因果関係を持つ可能性が示されています。Frontiers

多く含まれる食品・生活習慣

  • 鮭、さんま、さば、しらす

  • 卵黄、ビタミンD強化乳製品

  • 日光浴(季節・皮膚の状態に応じて適度に)

臨床的コメント
血液検査で25(OH)ビタミンDを測定し、不足があれば医師の管理下で補充するのが理想です。特に更年期の時期で片頭痛が増悪している患者さまにとって、骨粗しょう症予防としても2重の意味で効果がある治療方法だと思います。


2-5. オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)

ポイント

  • 青魚に多いn-3系多価不飽和脂肪酸

  • 抗炎症作用・神経保護作用を持ち、CGRPや炎症性メディエーターへの作用を通じて片頭痛に関与すると考えられています。Frontiers

エビデンス

  • オメガ3脂肪酸/オメガ6脂肪酸の比率を調整する食事介入試験(BMJ 2021)では、オメガ3を増やしオメガ6を減らした群で頭痛日数と重症度が有意に減少しました。BMJ

  • 高用量EPA製剤の12週間ランダム化比較試験では、片頭痛発作の頻度・重症度の有意な低下と、心理症状やQOLの改善が示されています。PubMed

  • 2025年のメタ解析でも、オメガ3を中心とした脂肪酸サプリメントが片頭痛の臨床症状を改善する中等度のエビデンスがあると報告されています。OUP Academic

多く含まれる食品

  • いわし、さば、さんま、さけなどの青魚

  • えごま油、亜麻仁油(ALA→EPA/DHAに一部変換)


3. 日常生活での「片頭痛にやさしい食事」のポイント

3-1. 積極的にとりたいもの

  • 魚(とくに青魚)を週2〜3回

  • 緑黄色野菜・海藻・大豆製品を毎食少しずつ

  • 玄米や全粒粉パンなど、精製されていない穀物

  • 発酵食品(納豆・ヨーグルトなど)

これらは、上で紹介したマグネシウム・ビタミンB群・ビタミンD・オメガ3脂肪酸を自然に含む「地中海食/和食」に近いパターンで、片頭痛だけでなく生活習慣病予防にも有利とされています。PMC+1

3-2. 控えめにしたい食品・食習慣

  • 赤ワイン・ビールなどアルコール

  • チョコレート、熟成チーズ、加工肉(ハム・ソーセージ)

  • カフェインの「飲み過ぎ」と「急な断ち方」

  • MSGやアスパルテームを多く含む加工食品

  • 極端な空腹(食事抜き)や血糖の乱高下

「絶対に禁止」ではありませんが、ご自身の頭痛日記と照らし合わせて、発作と関係が強そうなものを控えめにするのがおすすめです。Nature+3American Migraine Foundation+3pfizerforall.com+3


4. サプリメントを使う際の注意点

片頭痛予防におけるサプリメントは、あくまで**「標準的な片頭痛治療(予防薬・急性期薬)」の補助**であり、それ自体をもって治療を置き換えるものではありません。

  • サプリでも用量依存の副作用があります(マグネシウムの下痢、ビタミンDの高カルシウム血症など)。Frontiers+1

  • ワルファリンなどの抗凝固薬・抗てんかん薬・片頭痛予防薬との相互作用に注意が必要な成分もあります。MDPI+1

  • 妊娠中・授乳中、小児では安全性のデータが限られるものもあるため、必ず主治医に相談してください。

「片頭痛予防サプリを何種類も自己流で飲む」ことはおすすめできません。
血液検査や生活背景、既存の治療薬を踏まえて、医師と一緒に「優先度の高い栄養素」を絞り込むことが大切です。


5. まとめ

マグネシウム、ビタミンB2・B6・葉酸・B12、CoQ10、ビタミンD、オメガ3脂肪酸などが欠乏していると片頭痛が起こりやすくなります。逆に言うと、これら栄養素の欠乏がある場合は無理にお薬を飲むことなく、栄養素の補充を行うことで頭痛が改善する可能性があるということです。

  • 一方で、アルコール、チョコレート、熟成チーズ、加工肉、カフェイン、人工甘味料などは一部の方でトリガーとなりうるため、頭痛日記で関連を確認し、必要に応じて控えめにすることが有効です。

  • サプリメントは標準治療の補助として位置づけ、自己判断での多剤併用は避け、専門医に相談しながら安全に取り入れていくことが重要です。


参考文献

1:Gaul C, et al. Improvement of migraine symptoms with a proprietary supplement containing riboflavin, magnesium and Q10: a randomized, placebo-controlled, double-blind, multicenter trial. J Headache Pain. 2015;16:516.PubMed

  1. 2:Schoenen J, et al. Effectiveness of high-dose riboflavin in migraine prophylaxis: a randomized controlled trial. Neurology. 1998;50(2):466–470.Frontiers

  2. Boehnke C, et al. High-dose riboflavin treatment is efficacious in migraine prophylaxis: an open study in a tertiary care centre. Eur J Neurol. 2004;11(7):475–477.Frontiers

3:Liampas I, et al. Vitamin D serum levels in patients with migraine: a meta-analysis. Rev Neurol (Paris). 2020;176(7):560–570.Frontiers

  • 4:Hu C, et al. Vitamin D supplementation for the treatment of migraine: a meta-analysis of randomized controlled studies. Am J Emerg Med. 2021;50:784–788.Frontiers+1

  1. 5:Niu PP, et al. Higher Circulating Vitamin D Levels Are Associated With Decreased Migraine Risk: A Mendelian Randomization Study. Front Nutr. 2022;9:907789.Frontiers

6:Ramsden CE, et al. Dietary alteration of n-3 and n-6 fatty acids for headache management (H3-L6 trial). BMJ. 2021;374:n1448.BMJ

  1. 7:Wang HF, et al. A 12-week randomized double-blind clinical trial of high-dose EPA in episodic migraine. Headache(オンライン先行; 2024).PubMed

8:Garcia-Pérez-de-Sevilla G, et al. Impact of fatty acid supplementation on migraine outcomes: a systematic review and meta-analysis. Nutr Rev. 2025;83(9):1621–1638.OUP Academic

  1. 9:Hajhashemy Z, et al. Practical supplements for prevention and management of migraine attacks: a narrative review. Front Nutr. 2024;11:1433390.Frontiers

  2. Fajkiel-Madajczyk A, et al. Evaluating the Role of Coenzyme Q10 in Migraine Therapy. Antioxidants. 2025;14(3):318.MDPI