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朝の頭痛は睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサイン?原因と治し方を解説

 

【医師監修】朝の頭痛は睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサイン?原因と治し方を解説

 

「毎朝、起きると頭がズキズキする」「頭が重くてスッキリ起きられない」

このような症状に対し、市販の頭痛薬で対処していないでしょうか?

実は、その頭痛の原因は「脳」や「肩こり」ではなく、**「睡眠中の呼吸」**にあるかもしれません。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と頭痛の密接な関連性について、最新の医学論文や統計データを基に解説します。


 

1. 結論:SASと頭痛は深く関係している

 

まず結論から申し上げます。睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、医学的に明確な「頭痛の原因」の一つです。

単なる寝不足による頭痛とはメカニズムが異なり、SAS特有の**「起床時頭痛(Morning Headache)」**と呼ばれる症状が現れるのが特徴です。

 

統計データで見るSASと頭痛の頻度

 

実際の医学研究において、SAS患者さんがどれくらいの割合で頭痛を抱えているかを示すデータがあります。

【統計データ】SAS患者における頭痛の有病率

  • **全SAS患者の約15%〜60%**が頭痛を訴える [1][2]。

  • 特に女性のSAS患者や、重症度の高い患者ほど頭痛の頻度が高い傾向にある。

一般的な頭痛持ちの割合よりも明らかに高く、SASの重症度と頭痛の強さは比例する傾向にあります。


 

2. なぜ痛む?SASが頭痛を引き起こすメカニズム

 

「呼吸が止まること」と「頭が痛くなること」。一見関係なさそうに見えますが、体内では以下のような危険な連鎖が起きています。

 

① 二酸化炭素による「脳血管の拡張」

 

もっとも主要な原因は、血液中のガス交換の異常です。

  1. 睡眠中に呼吸が止まる(無呼吸)。

  2. 体内の酸素が減り、**二酸化炭素(CO2)**が排出できずに溜まる。

  3. 二酸化炭素には**「血管を広げる作用」**がある。

  4. 脳の血管が過剰に拡張し、周囲の神経を圧迫・刺激する。

  5. 朝起きた時に、ズキンとする頭痛や頭重感が生じる。

② 睡眠の分断と脳のストレス

 

無呼吸のたびに脳は「息をしろ!」と強制的に覚醒(マイクロア覚醒)を繰り返します。これにより、脳が十分に休まらず、慢性的なストレス状態となり、緊張型頭痛のような痛みを誘発します。


 

3. あなたの頭痛はSAS?「睡眠時無呼吸性頭痛」のチェックリスト

 

国際頭痛分類(ICHD-3)では、「睡眠時無呼吸性頭痛」には明確な特徴があると定義されています [3]。以下の項目に当てはまる場合、SASの可能性が非常に高いと言えます。

チェック項目 SAS由来の頭痛の特徴
発生時間 起床時に最も痛く、起きて活動すると30分〜4時間以内に自然に治まる。
痛みの種類 ズキズキする脈打つ痛みより、**「締め付けられる」「重苦しい」**痛みが多い。
頻度 ほぼ毎日、または週に数回発生する。
合併症状 いびきをかく、日中に強い眠気がある。

 

4. 治療による改善効果:CPAPで頭痛は治るのか?

 

最も気になる「治療すれば頭痛は治るのか?」という点について、多くの文献が**「イエス」**と報告しています。

SASの標準治療である**CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)**を行うことで、以下の効果が期待できます。

  • 頭痛の消失・軽減:

    ある研究では、CPAP治療を導入したSAS患者の多くで、起床時の頭痛が消失、または大幅に改善したと報告されています [4]。

  • 片頭痛の改善:

    もともと片頭痛持ちの方がSASを治療することで、片頭痛の頻度や発作の強さが減るというデータもあります [5]。


 

5. よくある質問(FAQ)

 

Q1. 頭痛薬を飲んでも治りませんか?

 

一時的に痛みは引くかもしれませんが、根本原因である「夜間の酸欠状態」は改善されません。毎朝薬を飲むことは胃への負担や、薬物乱用頭痛のリスクもあるため、原因治療が必要です。

 

Q2. 枕を変えれば治りますか?

 

枕の高さ調整でいびきが多少改善することはありますが、医学的なレベルの無呼吸症候群(SAS)を枕だけで完治させることは困難です。まずは検査をお勧めします。

 

Q3. どんな検査が必要ですか?

 

自宅でできる簡易検査(パルスオキシメーター等を用いたもの)や、精密検査(PSG検査)があります。まずは外来で問診を行い、適切な検査をご案内します。


 

まとめ

 

朝の頭痛は、身体からの**「夜、息ができていないよ」**というSOSかもしれません。

鎮痛剤でごまかすのではなく、睡眠の質を見直すことが、頭痛のない快適な朝を取り戻す近道です。

「もしかして?」と思われた方は、ぜひ一度当クリニックの専門外来へご相談ください。


 

参考文献

 

  1. 1:Loh NK, et al. The prevalence of headaches in patients with obstructive sleep apnoea. Headache. 2015;55(2):298-305.

  2. 2:Kristiansen HA, et al. Prevalence of headache in patients with sleep apnea: A systematic review. Cephalalgia. 2011.

  3. 3:Headache Classification Committee of the International Headache Society (IHS). The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition.

  4. 4:Neau JP, et al. Headaches and sleep apnea syndrome. Cephalalgia. 2002.

  5. 5:Johnson KG, et al. Sleep apnea and migraine. J Clin Sleep Med. 2019.