TOPへ

物忘れ

物忘れが激しい・ひどい

物忘れが激しい・ひどい日常生活で物忘れに気づくことは少なくありません。
朝食の内容が思い出せない、有名な俳優の名前が思い出せない、買い物リストの一つを忘れてしまったなど、これらは健忘と呼ばれ、誰にでも起こりうることであり、通常は病的なものではありません。

しかし、病的な物忘れは認知症の症状であり、健忘とは根本的に異なります。
最も一般的な認知症であるアルツハイマー型認知症では、物忘れが主要な症状として現れ、特に新しい出来事を記憶することが困難になります。
これは、記憶を司る脳の海馬という器官が萎縮することに起因すると考えられています。
私たちは、見聞きしたこと全てを完璧に覚えているわけではありません。
人の名前が思い出せない、物を置き忘れる、約束を忘れてしまうといった物忘れは、年齢に関係なく誰しもが経験することです。
一般的に、加齢とともに物忘れは徐々に増加します。しかし、認知症の症状として物忘れが現れることもあります。

認知症は、早期に発見し治療を開始することで、進行を遅らせることが可能です。
加齢による物忘れと、認知症に伴う物忘れには、いくつかの明確な違いがありますので、当院のページで詳細にご説明します。
もしご自身で気になる点がある場合、または自覚症状はないものの、ご家族から指摘を受けた場合には、お早めに当院へご相談ください。

こんな症状はありませんか?
物忘れのセルフチェック

最近このような症状はありませんか?

  • 日付の感覚が失われてきた
  • 旅行の記憶や家族の行事の思い出が、完全に抜け落ちている
  • お金の管理や薬の服用が困難になった
  • 物忘れを自覚していない、あるいは指摘されても思い出せない
  • 毎日同じ物を購入してしまう
  • 以前よりも怒りっぽくなった
  • 物忘れ以外に、手足の麻痺や発語の困難がある
  • 家にいないはずの人が見える幻視がある

なぜもの忘れをするのか

物忘れの原因は多岐にわたります。
多くの方が「物忘れは認知症ではないか?」と心配されますが、その原因は様々です。

加齢や生活習慣

  • 加齢に伴う自然な変化
  • 心の疲れやストレス
  • 疲労の蓄積や睡眠不足
  • 栄養バランスの偏り

病気

  • 甲状腺機能の低下
  • うつ病
  • 認知症(レビー小体型、アルツハイマー型、血管性など)
  • パーキンソン病
  • 頭部外傷による後遺症

加齢によるうっかりの
もの忘れと認知症との違い

加齢によるもの忘れ

物忘れは加齢に伴う記憶力低下の一環として現れることがあり、必ずしも疾患ではありません。
出来事の一部分を忘れたり、物をどこに置いたか思い出せなかったり、人の名前がすぐに出てこなかったりといった現象は、加齢によるものでも観察されます。

認知症の疑いがあるもの忘れ

認知症とは脳機能が継続的に低下し、日常生活や社会生活に支障が生じる状態を指し、加齢とは異なり疾患の症状です。
記憶力低下は認知症の中核症状であり、体験そのものを忘れてしまうのが典型的な忘れ方です。
認知症ではその他にも、計画を立てて順序立てて物事を実行する能力の低下、時間や場所の認識に障害が生じる見当識障害、言語障害、そして着衣などの行動が円滑に行えないといった症状を伴います。

もの忘れに影響する病気

アルツハイマー認知症

これは脳の神経細胞が徐々に失われる疾患で、高齢の患者さまに多く見られます。
初期症状として記憶障害が現れ、新しい情報を記憶できない、同じ質問を繰り返すといった特徴があります。

血管性認知症

広範囲な白質病変や脳卒中が原因で発症する認知症です。
物忘れに加えて、集中力や判断力の低下、不安定な歩行、感情制御の困難を伴うことがあります。

前頭側頭型認知症

この疾患は、初期には物忘れよりも性格や行動の変化が顕著に現れますが、進行すると記憶力の低下も認められるようになります。

レビー小体型認知症

物忘れに加えて、実際には存在しないものが見える幻視、動作の不器用さ、そして日によって認知機能が変動することが特徴です。

軽度認知障害(MCI)

これは認知症ではありませんが、物忘れが顕著になり始めた段階で適切な介入を行うことにより、進行を遅らせられる可能性があります。

アルコール依存症

過度な飲酒が長期間続くと、脳に損傷を与え、記憶障害や認知機能の低下を招きます。

慢性硬膜下血腫

頭部への衝撃後、血液がゆっくりと蓄積し、脳を圧迫することで物忘れが生じることがあります。
これは外科的な処置によって改善される可能性があります。

パーキンソン病

パーキンソン病は、物忘れだけでなく、筋肉の硬直、動作の緩慢さ、震えなどの症状を伴う神経疾患です。

うつ病

集中力の低下と気分の落ち込みが同時に現れ、記憶力や判断力も低下します。
うつ病による物忘れは、適切な治療によって改善する可能性があります。

甲状腺機能低下症

ホルモンの不足は、集中力や記憶力の低下を引き起こすことがあります。
甲状腺機能低下症によって起こる物忘れは、治療によって改善することが多いのが特徴です。

ビタミンB12欠乏症

ビタミンB12が不足すると、神経機能が低下し、記憶力や判断力が損なわれることがあります。

もの忘れがある時の検査

当院では、患者さまの物忘れの原因を正確に特定し、適切な治療へ移行するため、以下の検査を実施しております。

もの忘れがある時の検査

神経学的診察

問診と診察を通じ、物忘れに加えて潜在的な神経疾患の可能性を検証します。

MRI検査

最新のMRI機器を使用し、脳の状態を詳細に検査します。
特に、記憶に重要な部位である海馬や脳全体の萎縮の有無を確認し、アルツハイマー型認知症との関連性を評価します。
これにより、早期段階での診断が可能となります。

脳ドックはこちら

筆記テスト(認知機能検査)

現在の認知能力を評価するため、筆記形式や簡単な質問形式のテストを実施します。
記憶力、計算能力、言語能力、注意力など、多岐にわたる認知機能を評価します。
この結果に基づいて、軽度認知障害(MCI)と認知症を鑑別し、適切な治療計画を策定します。

もの忘れのケアと治療

ケアと治療

ケアと治療物忘れのケアと治療には、いくつかの側面があります。
有酸素運動、地中海食に近い食事、十分な睡眠、社会参加といった生活習慣の改善が挙げられます。
難聴、視力低下、睡眠障害、抑うつといった合併症の是正も重要です。
薬物治療は少量から開始し、定期的に見直す必要があります(抗コリン薬は原則として使用しません)。
介護者の負担軽減、サービス連携、意思決定支援といった家族・介護者へのサポートも不可欠です。

認知症の場合

認知症と診断された患者さまには、進行を遅らせるための治療を実施します。
症状の進行を抑制する薬物療法を主軸とし、必要に応じてリハビリテーションや生活習慣の改善を併用します。
また、ご家族への支援やケア方法に関するアドバイスも行い、患者さまとご家族を総合的にサポートいたします。

MCIの場合

MCI(軽度認知障害)とは、認知症へと進行する可能性がある段階を指します。
しかし、早期に適切な対応を行うことで、その進行を防ぎ、健康な状態を維持できる可能性が十分にあります。

当院では、まず生活習慣の改善を重視し、食事・運動・睡眠の質を整えるためのサポートを行っています。
さらに、必要に応じて認知症の予防に有効とされる薬剤による薬物療法を取り入れ、症状の進行を抑える治療を行います。

また、認知機能トレーニングとして、記憶力や集中力の維持・向上を目的としたプログラムを提案し、日常生活の中で脳を活性化させる取り組みをサポートしています。

もの忘れの改善や予防策

物忘れを予防したい患者さまには、以下の5つの方法をお試しください。

食生活の改善

食生活の改善物忘れを改善する方法の一つとして、食生活の見直しも有効です。
バランスの取れた食事を心がけつつ、物忘れ予防に効果的な食品を積極的に摂取しましょう。
DHA・EPAなどの不飽和脂肪酸やカテキンが含まれる食品は、認知症予防に効果的です。
代表的な例としては、サンマやサバなどの青魚、そして緑茶が挙げられます。
また、レシチンや葉酸が含まれる大豆製品や野菜なども効果が期待できます。
一方で、マーガリン・ショートニングや肉の脂身に多く含まれる飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は、物忘れを悪化させる可能性があるので、摂取しすぎないよう注意が必要です。

適度な運動

適度な運動は血流を促進し、脳の活性化に繋がり、生活習慣病の予防にも効果的です。
どのような運動でも構いませんが、特にレジスタンス運動は物忘れの予防や改善が期待できます。
レジスタンス運動とは、筋肉に繰り返し負荷をかける運動であり、腕立て伏せやスクワットが代表的です。
ダンベルやチューブといった道具を使用し、自重だけでなく筋肉に負荷をかける方法もあります。
特に高齢の患者さまには、足の筋力強化が重要です。
1回10分程度の運動を2〜3日に1回行うだけでも効果が得られます。

十分な睡眠

十分な睡眠質の良い睡眠を確保することは、物忘れの改善に役立ちます。
特に、深い眠りであるノンレム睡眠の時間を確保することが重要であり、そのためには6時間半から7時間半程度の睡眠が最適とされています。
寝不足を感じている場合は、早めに就寝するよう意識しましょう。
また、日中に10分程度の昼寝や目を閉じる時間を設けることも効果的で、これは脳の疲労回復にも繋がります。
良質な睡眠をとるため、起床後の行動や寝る前の習慣を見直してください。
例えば、就寝の1~2時間前に湯船に浸かり深部体温を上昇させた後、体温が低下するタイミングで布団に入ると、スムーズな入眠が促されます。
就寝時には照明を暗くし、起床後に太陽光を浴びることも、質の良い睡眠を得る上で効果的です。

趣味や習い事を始める

物忘れの改善には、薬だけでなく日常の楽しみを取り入れることも大切です。
特に、指や手を使う活動は脳を刺激し、記憶力の維持や向上に効果があるとされています。
ガーデニングや手芸などの手作業に加え、将棋や囲碁といった頭を使う趣味もおすすめです。

また、趣味や習い事を通じて地域のイベントやコミュニティに参加することも、心身の健康に良い影響を与えます。
ご家族以外の方との交流は、ストレスの軽減や脳の活性化にもつながり、前向きな気持ちで毎日を過ごす助けになります。

情報や知識をアウトプットする習慣を身につける

情報や知識をアウトプットする習慣を身につける記憶力を高めるためには、情報をただ「入力」するだけでなく、実際に「出力」することが大切です。
たとえば、テレビや本で得た知識をそのまま覚えるのではなく、ノートに書き出したり、自分の言葉でまとめたりすることで、記憶が定着しやすくなります。
また、学習した内容をテスト形式で確認するのも効果的な方法です。間違えた部分だけでなく、正解した箇所も改めて復習することで、より確実に記憶が定着します。

さらに、日記をつける習慣も記憶力の向上に役立ちます。
その日の出来事や感じたことを文章にまとめることで、情報と感情が結びつき、記憶がより鮮明に残るのです。
こうした「出力の習慣」を日常に取り入れることが、脳の活性化と記憶力アップにつながります。

お早目のご相談で適切な治療に繋げます

お早目のご相談で適切な治療に繋げます近年、医療分野は目覚ましい進歩を遂げていますが、アルツハイマー型認知症の根本的な治療法はまだ確立されていません。
しかし、認知機能や記憶に関連する物質を補給する薬物療法により、症状の改善や進行の抑制が期待できます。
また、認知症の原因物質として考えられているβアミロイドの蓄積を阻害する治療法の研究も進められています。
認知症においては、早期発見・早期治療が極めて重要です。
些細な違和感を覚えた段階から治療を開始することで、進行を遅らせることも可能です。
気になる症状がある方は、ぜひ当院までご相談ください。