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頭部の外傷

頭を打ってしまったら

頭を打ってしまったら頭部を強く打撲すると、脳を損傷する可能性があります。脳の損傷は、出血やこぶ、骨折といった外傷とは関係なく生じることがあります。
重篤な脳損傷の場合は通常直後から症状が現れますが、ゆっくりと出血している場合は、受傷から6時間前後など、時間が経ってから症状が現れることもあるため、受傷から24時間は注意深く状態を観察する必要があります。
特に高齢の患者さまでは、2〜3日後、さらには1〜2ヶ月後に症状が現れるケースもあるため、頭部を強く打った際は、2〜3日間はできるだけ安静にしてください。
出血を助長しやすい飲酒や入浴は避け、気になる症状があれば速やかに受診しましょう。

整形外科?脳神経外科?
何科を受診するべき?

整形外科?脳神経外科?何科を受診するべき?頭をぶつけた際の受診先としては、整形外科や脳神経外科が考えられます。どちらを受診すべきか迷う方も少なくありません。
脳神経外科では、外傷性くも膜下出血や脳挫傷など、命に関わる疾患を早期に発見できるため、頭部打撲後の受診先としてより適しています。
さらに、脳だけでなく脊髄や末梢神経の診断・治療にも対応しており、神経症状を伴う場合にも安心して受診いただけます。
また、整形外科を受診される場合でも、頭部CTが設置されている医療機関を選ぶことが重要です。
当院では、最新鋭のCTやMRIを導入し、外傷による脳や神経の異常を的確に把握することで、迅速かつ精度の高い診断を行っています。

頭を打った後、
こんな症状はありませんか?

頭部打撲後、以下の症状が現れた場合は、できるだけ早く脳神経外科を受診してください。

  • いつもと様子が異なる
  • 元気がない、ぐったりしている
  • 物が二重に見える
  • 焦点が定まらない
  • 頭がぼーっとする
  • すぐに眠ってしまう
  • けいれんが起こる
  • 今までに感じたことがないような頭痛がする
  • 嘔吐が止まらない、または吐き気を催し嘔吐を繰り返す
  • 手足のしびれ、または手足に力が入らない、動かしにくい
  • だんだん頭痛がひどくなる
  • 意識が朦朧としている
  • 物が見えづらい
  • 出血がひどい、たんこぶが改善しない
  • 血液混じりの水が耳や鼻から出た

頭部外傷が起こった際に
まずすべき初期対応

例えば、一緒にいる方が転倒して頭を強打した場合、まずすべきことは、打撲箇所の傷と意識の確認です。
傷の確認では、出血の有無を見ます。もし出血していれば、清潔なタオルやハンカチなどで直接圧迫してください。
頭部からの出血は不安を伴いますが、頭皮には血管が多いため、小さな傷でも出血しやすいことをご理解ください。
次に意識の確認です。これは、会話がきちんとできるか、負傷状況を理解しているかなどを確認することで行います。

頭を切っている場合

少量の出血がある

頭をぶつけた際、角のある物などに当たると出血を伴うことがあります。
出血が少ない、あるいは見た目に傷がない場合でも、「大したことはない」と軽く考えてしまう方も少なくありません。しかし、頭部打撲は出血の有無にかかわらず、命に関わる重大な疾患につながる可能性があります。

頭部の急性出血による症状は、多くの場合24時間以内に現れます。そのため、打撲後は少なくとも24時間は注意深く観察し、頭痛・吐き気・意識のもうろう・脈拍や呼吸の異常などがないかを確認してください。
また、症状がすぐに出ないケースもあり、2〜3日間は経過を観察することが重要です。
まれに、打撲から数日〜1週間後に症状が現れることもあるため、違和感が続く場合は早めに受診しましょう。

応急処置としては、頭を高くして安静にし、冷たいタオルや保冷剤などで患部を冷やすことが有効です。
軽い打撲であればこの処置で十分な場合もありますが、打撲後に意識を失った・吐き気や頭痛がある・記憶があいまいになるといった症状が見られる場合は、脳震盪や頭蓋内出血の可能性もあります。
その際は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診してください。

多量の出血がある

頭部を打撲した際、切り傷を伴うと大量に出血することがあります。
頭部は血管が豊富なため、小さな傷でも出血が多く見えることがありますが、出血量が多い場合は注意が必要です。
人の体には、体重のおよそ13〜14分の1の血液が流れており、その20%を失うと出血性ショックを起こす危険があり、30%以上の出血では命に関わるとされています。
そのため、頭部からの多量な出血を確認した場合は、すぐに止血を行い、速やかに医療機関を受診することが大切です。

応急処置(止血の方法)

  • 清潔なタオルやハンカチを使用して止血します。
  • 頭部を心臓より高い位置に保ち、出血部位を直接圧迫します。
  • 血液には直接触れないよう、手袋などで手を保護してください。
  • タオルやハンカチを傷口にしっかり押し当て、3〜4分間圧迫し続けます。

軽度の出血であれば3〜4分程度で止まることもありますが、出血が止まりにくい場合は圧迫を続けながら、救急車を呼んでください。

応急処置を施した後は、必ず医療機関で医師の診察を受け、傷の深さや脳への影響の有無を確認することが重要です。

意識がない場合

頭部外傷により意識がない状態は、重症頭部外傷と診断されます。
頭部を強打した直後に意識がない場合はもちろんのこと、当初意識があっても時間が経つにつれて意識障害が生じた場合は、一刻も早く救急医療機関を受診してください。

頭部外傷後の48時間は
注意が必要

頭を打った直後は症状が軽くても、数時間から1〜2日後に異常が現れることがあります。
そのため、受傷後48時間は年齢に関係なく、ご自身や周囲の方がしっかりと経過を観察することが大切です。

夜間も安心せず、就寝前とその4時間後の2回程度は意識や反応を確認しましょう。
普段どおり会話ができるか、歩行がふらつかないかなどをチェックしてください。
一人暮らしの方は、家族や知人に連絡を取り合うようお願いしておくと安心です。

また、呼吸が乱れている、普段と睡眠の様子が違う、強く揺すっても目を覚まさないといった場合は、脳に損傷がある可能性があります。その際は、ためらわず救急要請または医療機関に連絡してください。

48時間が経過しても頭痛・吐き気・めまい・手足のしびれ・言葉が出にくいなどの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。
問題がなければ、通常の生活に戻して構いませんが、1週間ほどは激しい運動や飲酒を控えるようにしましょう。

頭部外傷の経過は、衝撃の大きさや年齢、既往歴によっても大きく異なります。
軽い転倒やスポーツでの衝突でも、一時的な頭痛やふらつきだけで済むこともあれば、交通事故や転落などでは、時間をおいてから意識障害が現れるケースもあります。
そのため、どんなに軽度の打撲であっても、「念のため様子を見る」ではなく、少しでも違和感があれば早めの受診を心がけることが大切です。

頭部外傷後に考えられる病気

皮膚の損傷

頭皮は血管が豊富で、わずかな傷でも出血量が多くなる傾向があります。また、頭皮は頭蓋骨や頭蓋内静脈と繋がっており、皮下感染が生じると、免疫力の低い方の場合、細菌が頭蓋内に侵入し、脳膿瘍などの頭蓋内感染を引き起こすことがあります。

脳震盪

頭痛、吐き気、集中力の低下、言葉が出にくいなどの症状が見られます。スポーツ中に起こりやすい症状であり、この場合はプレーに戻らないでください。再度頭部を打撲した場合、命に関わる危険性があります。

外傷性くも膜下出血

これは、いわゆるくも膜下出血(動脈瘤などによるもの)とは異なり、それ自体で重篤な病態となることは稀です。
くも膜下腔というスペースに出血することで血腫となり、脳を圧迫するケースも稀です。
出血は静脈性であることが多く、比較的早く止血が完了することが多いです。

急性硬膜下血腫

脳と硬膜の間に血腫が溜まり、脳を圧迫する状態です。これは急性硬膜外血腫と比較して重症化しやすい傾向にあります。硬膜に比べて脳が柔らかいため、血腫による圧迫で脳が変形しやすいことが理由です。
特に脳幹を圧迫した場合、命に関わるため、可及的速やかに開頭術を行い血腫を除去する必要があります。

急性硬膜外血腫

硬膜と頭蓋骨の間に血腫が溜まり、脳を圧迫します。これは、頭蓋骨に付随する硬膜の血管である中硬膜動脈の破綻によって生じます。
脳外科医の間では「lucid interval(意識清明期)」として知られており、一度意識が清明になった後に突然急変するのが特徴です。早期診断が予後を大きく左右します。

脳挫傷

脳自体が損傷する脳挫傷は、前頭葉下面や側頭葉先端部などに多く見られます。初期の脳挫傷はCTでの診断が難しいことがありますが、MRIでは初期段階でも問題なく診断が可能です。
前頭葉が両側性に損傷した場合、人格が変わると言われることがありますが、これは脱抑制状態となり、自己コントロールが困難になるためです。
一度挫傷した脳が元に戻ることは難しく、将来的にはてんかん発作の原因となることがあります。
高次脳機能障害を引き起こす可能性もあるため、入院の上、リハビリ専門医による評価が必要となります。

頭蓋骨骨折

頭蓋骨骨折は、身体の片側の麻痺、感覚障害、言葉の出にくさ、痙攣などの症状を引き起こします。
また、頭蓋骨内の圧力が上昇することで、強烈な頭痛、嘔吐、意識障害を伴うこともあります。
このような場合は、直ちに救急車を呼ぶ必要があります。

高次脳機能障害

頭部外傷を負った際は、過去の記憶を思い出せない、または新しい物事を覚えられないような記憶障害、集中力の低下や注意散漫が生じる注意障害、無関心、イライラ、性的な逸脱行為、ギャンブルへの没頭などの行動障害、思考、判断、問題解決が困難になる思考障害などの高次脳機能障害が現れることがあります。

頭部外傷後
小さな違和感があれば検査を

頭部外傷後小さな違和感があれば検査を頭部を打撲した際、命を守り、障害を残さないためには、早期かつ正確な診断が重要です。
当院では、最新鋭のCTやMRIを導入し、骨折や病気の早期発見に努めています。症状はすぐに現れるとは限らず、必ずしも強烈なものとは限りません。
外傷直後の受診が理想的ですが、しばらく様子を見ていて何か気になることがあれば、できるだけ早くご相談ください。