片頭痛について
片頭痛は、血管の拍動に合わせてズキズキと痛むのが特徴で、悪心(吐き気)や嘔吐、光や音、においに対して過敏になることを伴う頭痛です。
発症の頻度には個人差があり、月に1~2回程度の方が多い一方で、年に数回しか起こらない方や、週に1回ほどの頻度で発作がみられる方もいます。
頭痛が起こる前には、視覚・言語・感覚などの異常が前兆として現れることがあります。
症状は頭痛だけでなく、吐き気や嘔吐、車酔い(特に小児に多い)、めまい、腹痛、光・音・臭いへの過敏反応など、多岐にわたります。
また、ギザギザした光が見える「閃輝暗点」や、視野の一部が欠ける「半盲」、一時的に言葉が出にくくなる「一過性失語」、物の形や大きさが変わって見える「変視症」などの症状がみられることもあります。
空間がゆがんだり物が大きく見えたり小さく見えたりする現象は、「不思議の国のアリス症候群」とも呼ばれており、片頭痛患者さんの16.5%に発症すると言われており、片頭痛は視覚領域に影響をおよぼす病気なのです。
参考文献:Fitzetet al. J Neurol 2024.
片頭痛がおこるメカニズム
片頭痛の発生機序はいまだ明確には解明されていませんが、いくつかの有力な仮説があります。
その一つが「皮質拡延性抑制(cortical spreading depression:CSD)」と呼ばれる現象で、前兆期に後頭葉の脳血流が一時的に低下することが知られています。
また、頭痛の発現には「三叉神経血管系」の関与が深いと考えられています。
三叉神経血管系とは、脳底部の主幹動脈から大脳皮質表面の軟膜動脈、さらには硬膜の血管に至るまで、三叉神経節からの神経線維が分布する領域のことです。
何らかの刺激が硬膜の血管周囲にある三叉神経の軸索に加わると、神経終末からCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド) や サブスタンスPなどの神経ペプチドが放出されます。これらは血管を拡張させる物質として働き、周囲の炎症を引き起こします。
さらに、硬膜周囲の肥満細胞などが活性化されることで「神経原性炎症」が生じ、これが片頭痛の痛みを引き起こす要因の一つと考えられています。
頭痛に対する新薬について
片頭痛に悩む方に朗報です。
2025年9月に「ナルティークOD錠75 mg(一般名:リメゲパント)」が日本で承認されました。
頭痛発作時の治療と発症抑制(予防) の両方に使用できる内服薬です。
米国ではすでに2020年から使用されているお薬になります。
当ホームページでも詳しく解説しているため、ぜひご覧ください。
片頭痛治療薬(鎮静薬)
頭痛発作時の急性期治療薬として、トリプタン系薬、消炎鎮痛剤、ジタン系薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)があります。
片頭痛治療薬の主な使い分け
薬の使い方は、医師の判断や頭痛の状態によって異なり、必ずしもマニュアル通りに進むとは限りません。
当院では、効果と副作用のバランスを慎重に見極めながら、患者さまお一人おひとりに最適な薬剤と服用方法を検討しています。
小児や妊娠・授乳期の方には、安全性の高いアセトアミノフェンを第一選択として検討します。
それ以外の方には、頭痛の重症度に応じて、中等度〜重度の片頭痛にはトリプタン製剤、軽度〜中等度の片頭痛にはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の使用を推奨しています。
軽度〜中等度の頭痛でNSAIDsが効果を示さない場合には、MRI検査などで二次性頭痛を除外したうえで、トリプタン製剤に切り替えるケースもあります。
また、発作の頻度が高い方や、トリプタン製剤の効果が不十分な方には、片頭痛治療薬と併用して予防薬の服用をおすすめすることがあります。
トリプタン製剤は海外では7種類ありますが日本では5種類あり、患者さまの年齢・性別・既往歴・副作用の出方などを考慮して、まず1種類を選び処方します。
しかし薬の効き方や副作用には個人差が大きいため、最初の薬が合わない場合も少なくありません。
そのため当院では、少量から慎重に処方を開始し、効果や副作用を丁寧に確認しながら、最も適した薬と服用方法を見つけていくことを大切にしています。
ちなみに、トリプタン製剤は最初の処方が合わなかったとしても3剤目まで根気よく試すと効果がある製剤に出会える可能性が高まるといわれています。1剤目で無効な人が63.8%、2剤目で無効な人は37.7%、3剤目まで試して無効であった人は4.6%という報告があり、私自身診療では3剤目まで試させてくださいとお願いしています。
参考文献:Wilcha,et al.Chepalalgia2024.
トリプタン製剤は脳心血管疾患がある方には処方禁忌とされておりますので、初めに処方される場合は脳血管疾患がないかMRI撮影を推奨しています。
トリプタン系薬
イミグラン
(スマトリプタン)
イミグラン(スマトリプタン)には、注射、錠剤、点鼻の3種類の剤型があります。
イミグランの皮下注射は、12分で効果が現れる即効性が特長です。患者さま自身で注射できるため、必要な時にいつでも使用できます。また、妊娠中の患者さまへの使用データが豊富であり、頭痛が悪化した際にも比較的安全に投与が可能です。
ゾーミッグ
(ゾルミトリプタン)
これは第二世代のトリプタン製剤で、比較的強い効果が期待できますが、眠気の副作用が強く出る傾向があります。
通常の錠剤に加え、口腔内速溶錠(RM錠)も利用可能で、場所を選ばずに服用できる利点があります。
レルパックス
(エレトリプタン)
トリプタン製剤を初めて使用される患者さまには、レルパックス(エレトリプタン)をお勧めします。
この薬剤は、薬の効き目が早く、中枢性の副作用や首・胸の締め付け感が少ないのが特徴です。
また、授乳中の使用も問題ないというエビデンスがあり、産後の患者さまにも比較的安心してご使用いただけます。
マクサルト
(リザトリプタン)
マクサルト(リザトリプタン)には、通常の錠剤に加え、口腔内崩壊錠(RPD錠)があります。
小児領域でのデータが豊富であり、エレトリプタンと同様に小児の患者さまにも使用しやすいとされています。
また、もっとも速攻性があるトリプタン製剤であり、2025年の国際ガイドラインでは最も鎮痛効果が有効であったとの報告もあります。参考文献:Ornello, et al.Cephalagia2025.
また、月経周期付近で生じる片頭痛増悪期に対し、トリプタン予防内服療法という手法があり、マクサルトが最も有効であったという報告があります。
アマージ(ナラトリプタン)
月経に関連する頭痛や発作期間が長い患者さまには、半減期が長いアマージ(ナラトリプタン)をお勧めすることも多いです。
この薬剤は副作用が少ないことも特徴です。
ジタン系薬
ラスミジタン
レイボーがセロトニン1F受容体に結合することで、頭痛発作の原因物質であるCGRPなどの放出を抑制する効果が期待できます。トリプタン製剤は頭痛の起こり始めに内服しないと効果が乏しいと言われていますが、ジタン製剤はある程度頭痛が起こってからでもよいと言われています。
消炎鎮痛薬
カロナール
(アセトアミノフェン)
カロナールは胃への負担が少なく、使いやすい薬剤です。
肝臓に負担がかかる可能性はありますが、ほとんどの場合問題ありません。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
セレコックス
(セレコキシブ)
セレコックスはCOX-1には作用せず、COX-2に選択的に作用するため、胃を荒らす副作用が少ない鎮痛剤とされています。
また、効果の持続時間が長いため、急な効果切れによる痛みが感じにくい(ロキソニンと比較して)ことから、活用されることが多いです。
ロキソニン
(ロキソプロフェン)
ロキソニンは、軽度から中等度の片頭痛や緊張型頭痛の痛みを和らげる目的で処方します。
痛みの原因となる「プロスタグランジン」という物質の生成を抑えることで、頭痛の痛みを軽減します。
できるだけ痛みの初期段階で服用することで、より高い効果が期待できます。
ただし、胃への負担がかかることがあるため、空腹時の服用は避け、食後に服用するようにしてください。
また、腎機能や胃腸に疾患のある方、他のNSAIDsを使用中の方は、必ず医師にご相談ください。
※頭痛が頻繁に起こる方は、痛み止めを繰り返し使用しすぎると「薬物乱用頭痛」の原因となることがあります。服用頻度についても医師の指示を守りましょう。
片頭痛予防薬
月2回以上の片頭痛発作がある患者さまには、予防治療をお勧めしています。
予防治療により、発作の頻度や痛みの強さを改善することが可能です。
当院で主に用いる予防薬は下記の通りです。
ミグシス(塩酸ロメリジン)
片頭痛と診断された患者さまのファーストチョイスとして、Ca拮抗薬であるミグシスを処方しています。
理由としては副作用が少ない(ただし妊婦の方は禁忌です。動物実験レベルで催奇形性が確認されています。)のと、1日2回の内服なので毎日飲むにしても負担が少ないからです。実際に日本で一番使用されている割合もこのお薬が多いと言われています(使用されている予防薬の中で12.4%を占めます)。2か月間の投与で効果を実感される方が約半数以上と言われています。逆に言うと全員が全員効果を実感できるわけではなく、違う予防薬のほうが合う方もいらっしゃいます。
In the present study, it was found that calcium-channel blockers were the most commonly prescribed
preventive medication (12.4%), followed by antiepileptics (7.3%), antidepressants (3.7%), beta-blockers
(1.8%), and anti-CGRPmAbs(0.4%).
参考文献:The Journal of Headache and Pain. volume 25, Article number: 19 (2024)
ミグシスの使用により、発作回数の減少、頭痛の程度の軽減、発作治療薬の減量、および片頭痛の前駆症状の改善が期待できます。
この薬剤は脳血管に選択的に作用するため、血圧低下はほとんど見られません。
血管の収縮と拡張の差を抑えることで片頭痛発作を軽減し、血管の安定化を図ることで頭痛の誘発を抑制します。
早い方では1週間で効果を実感でき、通常は1〜2ヶ月で効果を見極めます。
インデラル(β遮断薬:
プロプラノロール)
インデラルは、もともと血圧降下や血管拡張作用を持つ薬剤です。
本態性振戦や血圧の治療にも用いられます。
この薬剤も血管の収縮・拡張に作用することで頭痛の頻度を減少させるとされています。
個人的には3~4番目ぐらいの選択肢としている片頭痛の予防薬です。理由としては1日3回内服する必要がある(特に昼食後に内服しないといけないのが働いている人としては忘れてしまう可能性がある)、喘息を持たれている方は禁忌であること、リザトリプタン(マクサルト)を内服している方の場合にその血中濃度を変動させてしまうので禁忌となってしまうことからやや使用しにくい印象を受けるからです。脈拍が早くなる不整脈をお持ちの方の場合第1選択となる場合もあるでしょうが、片頭痛の好発年齢を考えるとそのような方は少ないと思います。最大のメリットとしては妊婦さんにも禁忌ではないという点がほかの片頭痛薬と比べて秀でている点だと思います。
効果が乏しいというわけでなく、古い文献ですが片頭痛発作をしっかり減らすことができるエビデンスもあるので、効果としてはミグシスと同程度と考えていただいてもよいかと思います。
参考文献:Neurology. 1983;33(5):617–621.
通常、30mg/日から開始し、30〜60mg/日の用量とします。
デパケン(バルプロ酸)
デパケンは元々てんかん治療薬ですが、ミグシスが登場する以前から片頭痛の予防に用いられていました。
眠気の副作用が強く現れることがありますが、高い効果が期待できます。
バルプロ酸は抗てんかん薬として有名です。それだけでなく、2002年躁病や2010年に片頭痛の予防薬としての効果も確認されました。片頭痛予防の領域でよく使用されるお薬であることは間違いないですが、私自身はあまり使用しません。まず理由の第1に妊婦さんが内服した場合に胎児奇形性が確認されていることです。片頭痛は30歳前後の女性に多い病気です。挙児希望がなかったとしても万が一にでも胎児に影響がでてしまうのを避けたいからです。第2に血中濃度を気にする必要があることです。てんかんの治療の場合もそうなのですが、バルプロ酸についてはどれほど体にお薬が吸収されているか血中濃度を測る必要がでてきます。50μg/ml程度が至適域と言われていますが、血液検査を定期的にしないといけないのはやや不便に感じてしまいます。最後の理由としては、肝障害が出現する可能性があることです。もちろんお薬である限りどんなお薬でも肝障害が出る可能性はあるかもしれませんが、バルプロ酸は特に肝障害が出現していないかどうか定期的な血液検査が推奨されているお薬です。
以上より、私自身は積極的に処方しておりませんが、片頭痛に対する効果を否定しているわけではありませんので、ほかの予防薬に効果が認めなかった場合は使用することはあります。
通常、500mgから600mg/日の服用が推奨されます。
トリプタノール
(アミトリプチリン)
トリプタノールは、慢性化した片頭痛に効果的な薬剤です。元々は抗うつ剤ですが、少量投与で鎮痛剤への依存を軽減する効果が期待できます(視調節障害、鼻閉、口渇、頻脈、便秘、排尿障害、緑内障の患者さまには禁忌です)。正直に申し上げると現時点で当院では第2選択薬となっているお薬です。片頭痛や緊張型頭痛にも効果がある便利なお薬です。また小児の片頭痛領域において欧州では第1選択薬として使用されたり夜尿症に対しても使用されます。しかし、最大の障壁としては、このお薬は添付文書上、抗うつ薬として分類されていることです。実際にそのような使用のされ方はされることがあるでしょうが、頭痛の診療を行っているものとしてはこのお薬は立派な頭痛治療薬です。作用機序としては下降性疼痛経路という痛みの経路を抑えることができる、鎮痛薬なのです。敬遠される方もいらっしゃいますが、このストレス社会において、またストレスが一番の片頭痛の原因であることから、当院ではある程度処方を行っており、またその効果を実感できている次第です。気を付けることは抗コリン作用により、前立腺肥大や緑内障が増悪してしまい、その病気を持たれている方は禁忌であるといことです。しかし、片頭痛の好発年齢を考慮するとそのような病気を持たれている方は少ないと思います。使用量は低用量(10~20mg/日、就寝前)が推奨されます。
CGRP抗体関連薬
(皮下注射製剤)
近年では、ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体による皮下注射での予防治療も実施されています。
エムガルティは、イーライリリー・アンド・カンパニーが開発したヒト化抗CGRPモノクローナル抗体で、片頭痛発作の発生を抑制する新しい作用機序を持つ薬剤です。
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は片頭痛発作時に増加することが知られており、本剤はCGRPに選択的に結合しその活性を阻害することで、片頭痛発作の抑制が期待されます。
内服の予防薬と比較して副作用が非常に少ないため、内服で効果が不十分な患者さまや副作用が出る患者さまには積極的にお勧めしています。
その他、アジョビやアイモビーグといった類似薬もあります。
なお、妊娠中の患者さまは使用できる薬剤が限られています。
基本的に妊娠とともに片頭痛は軽減し、発作頻度も減少する傾向にあります。
妊娠中で不安がある患者さまは、お気軽にご相談ください。
エムガルティ
エムガルティは、片頭痛の発症に関与する物質「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」に高い選択性で結合し、その作用を抑えることで発作の発生を防ぐCGRP抗体製剤です。
皮下注射で投与する薬で、初回のみ2本を使用し、2か月目以降は1か月ごとに1本を注射します。
初回に2本を投与することで、薬の血中濃度が早期に安定し、投与直後から効果を実感しやすいとされています。その後は、月1回の皮下注射を継続することで、発作の頻度や強さを抑える効果が期待できます。
デメリットとしては、初回投与時に2本分を使用するため、導入時の費用負担が他の製剤よりも高くなる点が挙げられます。
一方で、効果の立ち上がりが早いという大きな利点があり、早期の症状改善を求める患者さまに適した治療といえます。
また、日本では適応されていませんが群発頭痛にも効果があるとの報告があり、日本でも群発頭痛に対して使用できると頭痛治療の幅が広がるので心待ちにしています。
アジョビ
アジョビは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に選択的に結合し、αおよびβ-CGRPが受容体に作用するのを防ぐヒト化モノクローナル抗体製剤です。
CGRPに直接結合してその働きを抑える点で、エムガルティと同様の作用機序を持っています。
アジョビの特長のひとつは、初回に複数本をまとめて投与して薬の血中濃度を安定させる「導入投与(ローディングドーズ)」が不要であることです。
さらに、3本を一度に投与することで最長3か月間効果が持続するため、通院回数を減らしたい方にも適しています。
1か月ごとの投与と3か月ごとの投与を選べる柔軟なスケジュールで、忙しい方や長期の治療管理を希望される方におすすめです。
また、長期使用による効果の減弱(耐性)も起こりにくいとされており、
慢性片頭痛(MOH)の患者さんへの治療抵抗性片頭痛の患者さんへの治療エビデンスがある良い治療薬だと思います。また、片頭痛においてうつ病を合併する率は高く(約3割)、アジョビにより片頭痛を治療することで抑うつ傾向も改善傾向になるというデータも出ていますので、頭痛治療は積極的に行うべきだと考えます。
参考文献:Lipton RB, et al. JAMA Neurol. 2025 May 5.
アイモビーグ
アイモビーグは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体に直接結合し、その働きを阻害することで片頭痛の発作を予防するCGRP受容体拮抗抗体製剤です。
CGRPそのものを標的とする他の薬剤とは異なり、受容体に作用する唯一の薬剤という点が特徴です。
投与は4週間ごとに1回の皮下注射で行い、シンプルなスケジュールで継続できます。
また、完全ヒトモノクローナル抗体であるため、注射部位の発赤や腫れなどの局所反応が比較的少なく、体への負担が少ないのも利点です。
副作用としては、便秘がみられることがあり、もともと便秘傾向のある方には注意が必要です。
ただし、多くの場合は下剤の併用でコントロール可能です。
頭痛薬を多量に
使用されている方へ
(薬物乱用頭痛)
薬物乱用頭痛は、頭痛治療のために使用していた薬剤が、かえって頭痛を慢性化させる状態を指します。
片頭痛や緊張型頭痛を持つ患者さまが、市販薬や処方薬を頻繁に服用することで発症することが多く、その結果、ほぼ毎日のように頭痛が起こるようになります。
主な症状
- 月に15日以上頭痛がある
- 薬剤の効果が薄れるか、すぐに再発する
- 薬剤を減らすと一時的に頭痛が悪化するため、繰り返し服用してしまう
原因となりやすい薬剤
以下の薬剤を3ヶ月以上にわたり、1ヶ月に10日から15日以上継続して使用している場合、薬物乱用頭痛のリスクが増大します。
薬剤の種類と乱用の目安(1ヶ月あたりの使用日数)
- トリプタン系薬剤:10日以上
- NSAIDs(ロキソニンなど):15日以上
- アセトアミノフェン:15日以上
- エルゴタミン製剤:10日以上
- カフェイン含有鎮痛薬:10日以上
複数の鎮痛薬を併用している場合も注意が必要です。
薬を減らし、根本的な頭痛の
治療を
薬物乱用頭痛の治療では、まず原因となっている薬の使用を中止または減量することが基本となります。
多くの場合、薬をやめてから数週間〜数か月で頭痛が改善していきます。
ただし、中止直後は一時的に頭痛が強くなることがあり、その時期を安全に乗り越えるためには、もともとの頭痛(片頭痛や緊張型頭痛など)に対する適切な治療が欠かせません。
当院では、必要に応じて予防薬の導入や生活習慣の見直しを行い、再発を防ぐためのサポートも行っています。
頭痛薬が効かない場合に
考えられること
頭痛時に市販薬やロキソニンを服用しても効果がなく、不安を感じた経験のある患者さまは多いのではないでしょうか。
頭痛の原因に合った薬剤を選択しているか、頭痛を感じてから薬剤を服用するまでのタイミング、同じ鎮痛薬を頻繁に使用していないか、また二次性頭痛のような原因となる疾患がないかなどを確認することで、より効果的な頭痛治療が可能です。
患者さまそれぞれの頭痛に合った薬剤の選択と服用、そして頭痛を誘発しない生活習慣に気を配り、より良い頭痛治療を目指しましょう。
薬の服用タイミング
頭痛薬は、服用のタイミングによって効果が大きく変わることがあります。
特に片頭痛の治療に用いられるトリプタン製剤は、痛みが出てからできるだけ早い段階で服用することが重要です。
片頭痛の発作が起きてから30分以内に服用することで、より高い効果が得られやすくなります。
一方で、朝起きた時からすでに頭痛がある場合や、睡眠中に片頭痛が始まっている場合は、トリプタン製剤のみでは十分な効果が得られないことがあります。
そのような場合には、片頭痛予防薬の併用や他の鎮痛薬との組み合わせを検討し、症状のコントロールを図ります。
また、前兆を伴う片頭痛の方は、閃輝暗点などの前兆が現れた段階で服用するのは早すぎます。
薬は痛みが出始めてから服用することで、最も効果を発揮します。
薬の用量と正しい内服方法の
確認
片頭痛治療薬のトリプタン製剤のうち、ゾルミトリプタン(1錠2.5mg)とエレトリプタン(1錠20mg)は、日本での使用量が海外よりも少ないため、1錠で効果が不十分な場合は、次回の頭痛発作時に2錠服用できます。
1日の最大服用量はそれぞれ10mg(4錠)と40mg(2錠)と、錠数が異なります。
一方、ナラトリプタン(1錠2.5mg)とリザトリプタン(1錠10mg)は、海外と同用量が使用されています。
お子さまの頭痛でアセトアミノフェンやイブプロフェンを服用しても効果が思わしくない場合、30分後に同量を追加服用すると効果が感じられることがあります。
お子さまの場合は、年齢、体重、症状に合わせて薬剤の量や服用回数を調整することが重要です。

