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くも膜下出血

くも膜下出血とは

くも膜下出血とはくも膜下出血は、脳の血管にできた脳動脈瘤(血管のこぶ)が破裂することで起こる脳出血の一種で、発症後の死亡率は約50%と非常に高く、命に関わる危険な病気です。処置が遅れると再出血や重い後遺症を残すこともあり、早期発見・早期治療が何より重要です。
主な原因は脳動脈瘤の破裂で、全体の約80〜90%を占めます。
危険因子としては、喫煙・高血圧・多量飲酒・家族歴などが挙げられ、特に50〜60代の女性に多く見られます。
多くの場合、くも膜下出血は突然発症しますが、近年の研究では、数日前に「今までにない強い頭痛」や「首の痛み」などの前兆症状が現れることがあると分かってきました。
これらの症状はいったん治まることもありますが、そのまま放置すると致命的な発作につながるおそれがあります。
くも膜下出血は、特別な持病がなくても中年以降の方に起こりうる疾患です。
発症リスクや前兆を正しく理解し、早めの受診・検査を心がけることが、命を守る第一歩となります。

くも膜下出血を引き起こす原因

くも膜下出血は、くも膜下の血管が破裂することで引き起こされる出血です。
血管が破裂する原因として、以下が挙げられます。

高血圧

高血圧の状態が長く続くと、脳の血管には常に強い圧力がかかり、その負担によって血管の壁が次第に弱くなっていきます。その結果、血管の一部が膨らんで動脈瘤が形成されることがあり、この動脈瘤が破裂するとくも膜下出血を引き起こす危険性が高まります。

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外傷

外傷も原因となることが少なくありません。
日常生活での頭部打撲や、スポーツ中の衝突などが、くも膜下出血を引き起こす原因となることがあります。

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脳動脈瘤の破裂

動脈瘤とは、血管が異常に膨らんだ状態を指し、この膨らんだ部分が破裂するとくも膜下出血が生じます。
動脈瘤は、先天的に存在することもありますが、長期間にわたる高血圧によって動脈壁が弱くなることで発生することもあります。

脳動静脈奇形の破裂

脳動静脈奇形は、破裂によりくも膜下出血を引き起こすことがあります。
この奇形は先天的に存在することもありますが、一般的には症状が現れてから初めてその存在が判明します。

血液凝固異常

出血性疾患を抱える患者さまは、血管が破れた際に出血が止まりにくく、くも膜下出血のリスクが高くなることがあります。

くも膜下出血の前兆をチェック

くも膜下出血の前兆をチェックくも膜下出血の多くは、出血直前まで無症状で経過します。
しかし、特殊なケースでは、脳動脈瘤破裂の直前に前兆の症状が現れることがあるため、以下のような症状には特に注意をしてください。

  • 急激な血圧の変動(上昇または下降)
  • 突然の頭痛(軽度の場合もあります)
  • めまいや視力低下
  • 嘔吐、または吐き気
  • 意識レベルの低下や頭部の違和感(ぼんやりする、もやもやするなど)
  • 瞼の下垂
  • 複視(物が二重に見える)

くも膜下出血を疑う時の検査

くも膜下出血を疑う時の検査

神経学的診察

くも膜下出血が疑われる場合の神経学的診察では、まず意識レベルを確認し、意識障害の有無や程度を評価します。
次に、脳神経の異常(特に瞳孔の左右差や動眼神経麻痺)を確認し、動脈瘤破裂の可能性を探ります。
さらに、運動麻痺・感覚障害・言語障害などがないかを調べ、合併する脳梗塞や脳内出血の有無を推定します。
加えて、項部硬直などの髄膜刺激症状がみられるかどうかを確認し、診断の一助とします。
これらの診察でくも膜下出血が疑われた場合は、CTやMRIによる画像検査で確定診断を行います。

CT検査

くも膜下出血の診断には、CTスキャンが最も一般的に用いられます。
CTスキャンは脳の断層画像を詳細に描き出し、出血の有無を確認できます。
治療が必要となった際には、当院の提携病院をご紹介いたします。

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MRI検査

MRI検査は、CT検査に比べ、より詳細な画像を得られます。
しかし、CTスキャンに比べて時間と費用がかかるため、くも膜下出血は主にCTスキャンで診断されますが、発症から時間が経過した場合や軽症の場合には、CTスキャンでは検出できないこともあります。
そのような場合にMRIスキャンが用いられます。
これらの検査は、医師がくも膜下出血の確定診断を下す上で非常に有用です。
ただし、緊急を要する状況では、CTスキャンを迅速に行うことが何よりも重要です。

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脳脊髄液検査

くも膜下出血が疑われる場合、診断を確定するために脳脊髄液検査が実施されることがあります。
これは、微量の出血でCTスキャンでは捉えきれないケースにおいて、腰部から針を挿入して脳脊髄液を採取し、異常の有無を確認するものです。

くも膜下出血の治療

くも膜下出血の治療くも膜下出血を発症した直後、破裂した脳動脈瘤は血圧上昇などを契機に、24時間以内に再破裂することがあります。
再出血はくも膜下出血をさらに悪化させ、脳全体に深刻なダメージを与え、予後不良に繋がることが少なくありません。
そのため、くも膜下出血の急性期治療では、脳動脈瘤の再出血防止が極めて重要とされています。
この再出血を未然に防ぐために行われるのが手術です。
主な手術方法には、開頭手術と血管内手術があります。
治療が必要な患者さまには、速やかに提携病院をご紹介いたします。

くも膜下出血の予後や
退院後気をつけること

予後と後遺症

くも膜下出血を経験した後の生活では、後遺症について理解しておくことが非常に重要です。
発症後にはさまざまな症状が現れる可能性があり、患者さまはこれらの後遺症と向き合いながら日常生活を送る必要があります。

認知機能の低下

脳の損傷によって、記憶力・集中力・注意力・判断力などが低下することがあります。
このような認知障害は、仕事や家事だけでなく、日常生活全般に影響を及ぼすことが多く、くも膜下出血による高次脳機能障害の代表的な症状とされています。

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言語障害

脳の言語を司る領域が損傷すると、言葉が出にくい・文字が書けない・会話の内容が理解しにくいなどの症状が見られます。
これも高次脳機能障害の一つであり、社会復帰や人とのコミュニケーションに影響を与えることがあります。

運動障害

手足の麻痺や感覚の鈍さとして現れる後遺症です。
多くは身体の片側に症状が出ますが、重症例では四肢すべてに麻痺が及ぶこともあります。
リハビリテーションを続けても介助が必要な状態が続くケースもあり、日常生活への影響は大きいといえます。

感情や性格の変化

脳の大脳辺縁系と呼ばれる感情をつかさどる部分が損傷すると、感情表現が乏しくなったり、逆に喜怒哀楽が極端になったりします。
気分の落ち込みや不安、怒りっぽさなどが見られ、うつ病や不安障害を併発することもあります。
性格が変わったように感じられる場合もあり、ご家族の理解やサポートが欠かせません。

睡眠障害

身体機能の低下や心理的な不安から、眠れなくなる不眠症や、過剰に眠ってしまう過眠症が起こることがあります。
十分な休息がとれないことで体調を崩すなど、回復を妨げる要因にもなります。

慢性的な頭痛と疲労感

くも膜下出血の発作時には激しい頭痛が伴いますが、治療後も慢性的な頭痛に悩まされる方が少なくありません。
また、疲労感や倦怠感が続くケースも多く、身体的・精神的なエネルギーを消耗しやすくなる傾向があります。

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予後と回復への取り組み

くも膜下出血の予後は症状の重さによって大きく異なります。
軽症の患者さまでは会話のしにくさや手足の動かしにくさが残ることがありますが、重症の場合は意識が戻らないこともあります。
無事に回復された方でも、何らかの後遺症が残る可能性は少なくありません。
そのため、退院後も医師やリハビリスタッフの指導のもとで継続的なケアを行い、再発予防と生活の質の向上を目指すことが大切です。

退院後の生活ではリハビリが
重要です

くも膜下出血の回復には、日常生活の中での努力だけでなく、病院での定期的なリハビリテーションも欠かせません。
医師からリハビリの継続を指示されている場合は、症状の変化に応じた適切な治療を受けるためにも、定期的な受診を怠らないことが大切です。

リハビリの内容は、発症からの経過や回復の段階によって変化していきます。
退院後に行われるのは、機能の回復を目的とした「回復期リハビリ」や、症状の悪化を防ぎ、できる限り自立した生活を続けるための「維持期リハビリ」です。
どの時期においても、主治医の指導のもとで、自分の状態や目標に合わせたリハビリを継続していくことが、回復への近道となります。

くも膜下出血の発症予防

血圧のコントロール
(高血圧の予防)

高血圧は、くも膜下出血の発症リスクを高める重要な危険因子の一つです。
その主な原因として挙げられるのが、食塩の過剰摂取です。
日本人はもともと塩分を多く摂取する傾向があるため、まずは日々の食事で減塩を意識することが大切です。
さらに、バランスの取れた食生活に加え、適度な運動やストレスを溜めない生活習慣を心がけることで、血圧の上昇を防ぐことができます。

禁煙

喫煙は、タバコに含まれるニコチンが血管を収縮させ血圧を上昇させるため、くも膜下出血のリスクを高めます。
禁煙により、このリスクを低減させることが可能です。

生活習慣の改善

健康的な食生活と適度な運動習慣は、血圧を安定させ、くも膜下出血のリスク軽減に繋がります。

頭部外傷を避ける

スポーツや日常生活での転倒、衝突、転落などによる頭部外傷は、くも膜下出血の原因となり得ます。
ヘルメットの着用、注意深い行動、そして安全な環境づくりを心がけることで、こうした外傷を未然に防ぐことができます。